小瀬川の働くダム訪問レポート

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小瀬川解説図

 小瀬川は西中国山地を源流とし、広島県と山口県の県境を流れて瀬戸内海に注ぐ・・広島県内では中規模な河川です。ここには県内最大の有効貯水量を誇る弥栄ダムをはじめ、小瀬川ダム、渡ノ瀬ダム、飯の山ダムが設置されています。また、小瀬川の支流にある発電用の渡ノ瀬ダムには、小瀬川本流から分水して水量を増やすようにしてあります。渡ノ瀬ダムで取水された水は、瀬戸内海側(広島湾側)の発電所へ 送水され、ここで発電して、ふたたび小瀬川に水をもどすようになっています(図中の破線部分)


 2003年7月18日から19日にかけて広島県西部を中心に強い雨が降りました。インターネットで調べてみると、広島県と山口県の県境を流れる小瀬川の弥栄ダムが300m3/s(毎秒300トン)もの放流をしています・・流入量は400m3/s(毎秒400トン)以上になっており、その差100m3/s(毎秒100トン)以上の水をダムで食い止めていることが分かります。それで、実際に、ダムはどうなっているのか調べに行くことにしました。
 なお、大雨直後は落石や道路の陥没などの危険があるので、ダムの調査に行く場合は十分注意してください。


小瀬川下流部

 小瀬川は大竹市側からさかのぼっていくことにしました。この写真は大竹市市街地から少し上流のあたりで撮影したものですが、相当な水量です、堤防から見ていると落ちたら助からないと危険を感じるくらいです。小瀬川は、広島県では中規模な河川ですが、全国的にみたら、小規模な河川でしょうね・・それだけに、川幅はあまりなく、少しの増水で水位が上がってしまうようです・・普段は水量は少ないから川幅が狭いのでしょうか・・・。
 さて、これだけの水が流れているとなると上流にあるダムから放流していることが容易に想像できます・・すぐ上流にある、弥栄ダムはどうなっているのだろうか?・・とても興味を持ちました。



弥栄ダム遠望

 国道から弥栄ダムを望む・・ここから見たら、普段と変わらないように見えます・・・



コンジットゲートから放流中

 ダムへ行くと、轟音が唸っている!!!・・展望台から下を見ると減勢工(ダムから放流された水の勢いを落とす設備)の中は渦巻いています・・コンジットゲート(常用洪水吐(じょうようこうずいばき))から300m3/s(毎秒300トン)の放流が行われていて、すごいことになってました。しかし、このときの流入量は400m3/s(毎秒400トン)です・・この差100m3/s(毎秒100トン)分をダムに貯めて、水位の上昇を抑えているのです。そのまま流したら、小瀬川の水位は2〜3割高くなる可能性があります。毎秒300トンでも、あれだけの水位があったのですから・・・それより水位が上がると危ない場所もあるかもしれない・・
 当日、公式には洪水調整をしたと発表されませんでしたが、洪水調整とはこういうことなのかと現場を見て思いました。なお、弥栄ダムの洪水調整の余力は5000万m3(5000万トン)程度あり、天端(ダムのてっぺん)にあるラジアルゲート(クレストゲート)を開けないといけないようなことは100年に一回あるかどうかということだそうです。



副ダム

 減勢工先端にある副ダムの部分・・完全に水没しています・・



貯水池側を見る・・

 貯水池側を見てみた・・この程度の雨に対して・・余裕は十分ありますね・・



ラジアルゲートから

 ラジアルゲートから下を覗いてみました・・コンジットゲートはダム本体(堤体)内にあり、下に見えるスリット状の放水口から水は流れ出ています。弥栄ダムの高さは120m・・下を覗くのはちょっと恐い・・(汗)

 さて、弥栄ダムより上流はどうなっているのか興味を持ち、さらに上流へ向かうことにしました・・



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