2004年・森と湖に親しむ旬間・野呂川ダム見学レポート

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野呂川ダム
野呂川ダム

 野呂川ダムは、呉市安浦町(見学当時は豊田郡安浦町)の野呂川に設置されている主に洪水防御を目的とした小規模な多目的ダムです(昭和51年竣工)。堤高44.8m、総貯水量170万立方m(トン)です。野呂川は長さ10Km流域面積43.2平方kmの比較的小規模な河川です。
 「森と湖に親しむ旬間」にあわせて、ダムの見学ができるという情報をインターネットで入手・・小瀬川ダム同様、勇気を出して管理所へ電話して、見学について問い合わせました・・見学会という形式で行うのではなく、管理所とぼくの両方が都合のいい日を選んで見学へ行くことになりました。
 今回の見学では、野呂川ダムの話しをはじめ、所長さんから貴重かつ多様なお話しを伺うことができました、充実した内容で大変勉強になりました。なお、このレポートでは、野呂川ダムの話しを中心に簡単に書いていこうと思います。なお、見学からもうすぐ1年、レポートの提出が遅れてしまいました
 ・・・m(_ _)m(爆)


野呂川ダム

 野呂川ダムは、赤い大きなローラーゲートが特徴のダムです。野呂川ダムへ到着したら、まず管理所を訪問しました。ここで所長さんから多様なお話しを伺うことができました。そのうち野呂川ダムに関係する話を簡単にまとめて書いておきます。


● 小規模な河川にダムが建設されたいきさつ
 これは芸南地方を襲った昭和42年の水害が直接の動機になったそうです。野呂川は頻繁に洪水を起こし、安浦町の市街地は何度も被害にあっていました。長さ10Kmの川といっても、現在の河川整備計画によると洪水時には毎秒400立方m(トン)の水が流れると想定されています。つまり、小規模といいながら、一度洪水になると、相当量の水が流れるわけです。過去から何度も堤防の改修などが行われてきましたが、より効果が大きなダムを設置することになったそうです。このいきさつから分かるように、野呂川ダムの主要な役割は洪水の防御(治水)です。

● 洪水調整専用じゃなくて多目的ダムになっている理由
 これについては、野呂川ダムの下流で田畑に水を引いている人達がいます。ダムができたら時によっては水が流れなくなった・・・では、その人達には困った問題です。特に水利権などで明示してなくても、昔から水を使っていた人たちには既得権益として、水を使う権利を認め、不特定灌漑用水を確保する役割ももつことになりました。通常は、流れてきた水をそのまま下流に流していますが、渇水などで水が足らなくなったら、放流設備から貯水池の水を放流できるようになっています。

● 巷で話題の碓砂の問題については
 最近、ダムの話題の中で、ダムはすぐに砂で貯水池がうまって、使い物にならなくなるといった話がでてきます。それで、野呂川ダムの碓砂の状況を伺いました。野呂川ダムのような小規模なダムほど碓砂が激しい傾向があります。ダムができてから、すでに30年くらいたっていますが、碓砂容量(ダムはあらかじめ、砂がたまる容量を確保してあります)の5%ほどしか碓砂していないそうです。しかも、この碓砂容量は50年間で想定した量・・つまり、碓砂の問題については、野呂川ダムではほとんど問題ではないそうです。なお、碓砂の状況は毎年測定しているそうです。それと、建設時に碓砂容量をどれくらい確保するかを決める時、野呂川ダムの近くにあり地質もよく似ている二級ダムの碓砂状況を参考にしたそうです。

● 野呂川は水がきれい
 碓砂が少ないことにもつながりますが、野呂川ダムへ流れ込む野呂川の水はとてもきれいなんだそうです。そのため、夏でもアオコの異常発生といったことはないそうです。

● 最近の県営のダムの状況
 野呂川ダムは広島県が設置運用している県営のダムです・・広島県が設置運用するダムは他にも多数ありますが、最近の傾向として、御調ダムのようにゲートを設けず、オリフィスという穴で自然洪水調整するダムが増えています。これについては、やはり建設コストの低減、ゲートの点検整備といったコストの低減、そういった観点から採用されているそうです。ただ、こういったゲートのないダムではゲートで水の流れを細かく調整できませんから、若干ダムが大きくなる傾向があるそうです。
 野呂川ダムは、赤い大きなローラーゲートが一門ありますが、もし、今、建設することになったら、ゲートのないダムになったかもしれない・・なんてお話しもありました。

● 芸予地震の影響は
 広島県南部、特に芸南地方に被害が出た芸予地震で、ダムに何か影響があったのか尋ねたところ、全く影響なかったそうです。動かざるごと山の如し・・ダムはとても強固な建造物なんですね。


ゲートの支柱の上に

 さて、いろいろなお話しを伺った後、ダム操作室、そして、ダムの堤内を見学することになりました・・
 そうそう、ダムのゲートの支柱の上にこのように「森と湖に親しむ旬間」の幕が表示されていました。



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