龍姫湖・温井ダムまつり・温井ダム達人講座レポートその3
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キャットウォーク

 さて、監査廊を少し歩くと、キャットウォークにつながっていました。「これがキャットウォークですか?」と聞いたら「そうです、これが温井ダムのキャットウォークです」「関東地方や中部地方のアーチ式ダムには何本もキャットウォークがあるけど、温井ダムは2本だけなんですか?」「はい、温井ダムは2本です・・何本もキャットウォークがある・・私からすれば、なんで、そんなにキャットウォークが必要なんだろうって思いますけどね・・基本的には何か点検したり操作する装置への通路ですから・・何も無いところに設置するものじゃないんです・・それに、アーチ式はダムが薄いですから、あまり余計なものを取り付けたくないんですよ」

 キャットウォークとはアーチ式ダムのダム前面にある管理用の通路のことです。温井ダムはこのように風雨がかからないようになっていますが、普通は、通路だけです。



 温井ダムのキャットウォークは外の斜面の階段にもつながっていて、外にも案内してくれました。ただ、出入りする都度、鍵を開け閉めしています。「普通ならここに人が入ってくることはないでしょうが・・私たちが想定している以上のことをする人もいまして・・特にお子さまなどは(苦笑)」・・「今日なんかも、ダムの下から子どもが二人、この階段をずっと登っていって、上まで行ったそうなんですよ・・そこで警備員の人が注意したら、怒られると思って、この階段をいちばん下まで降りたそうです・・100m以上の標高差がありますから大人でもたいへんなんですけどね・・一応、階段の入り口には柵がありますから、大人なら入らないですが・・子どもは、柵の下をくぐって入ったそうです。それで急遽「立ち入り禁止」の張り紙をしました・・(苦笑)」・・・ダムの管理・・とても大変です・・特に温井ダムのように開放的なダムでは、こういった苦労もあるんですね・・・でも、これからも開放的なダムであって欲しいと思います。いきなり立ち入り禁止って書いてあるダムもありますが・・写真さえ満足に写せないです(涙)

 さて、キャットウォークを歩いて、中位標高放流設備へと向かいました・・加計町職員のお姉さん・・「実は、温井ダムに来たのは初めてなんですよ・・」と興奮気味・・・話題からして・・管理所の職員の人は、けんがダム好きであることを察知しているかも・・・(爆)・・ぇ・・ダムマニアじゃないですよ・・キャットウォークなんて生まれて初めて歩いたんだから(爆)

 ちなみに、キャットウォークを異性の人と一緒に歩くと結ばれるというダムマニア達の神話(そんなのあったかい?)の真偽は・・・確認されていません(爆爆)

 補足・・中部地方・関東地方のアーチ式ダムにたくさんキャットウォークがあるのは、ダムの表面の温度変化が大きく、クラック(ひび割れ)が生じるので、それを調べるためだとネット友達に教えていただきました。


中位標高放流設備内部

 続いて、中位標高放流設備の中に案内してもらいました。中位標高放流設備はホロージェットバルブ2条で構成され、最大毎秒60トンの放流が行えます。洪水初期やダムの水位の調整などの時に使われます。ホロージェットバルブは、この部屋の下にあり、ここにはホロージェットバルブを動かすための機器や整備するための機器が収められています。
 上からチェーンや滑車がぶら下がっていますが、これで、バルブの分解整備をする時に部品を動かすそうです。

 なお、整備する時はダム背面にある補助ゲートを閉じて行います。けんは今まで、水圧がすごいから補助ゲートとメインのゲートの2つで水を止めるのかと思っていましたが、実際にはメインのゲートだけで水を止めており、補助ゲートは整備の時に使うほか、メインのゲートが何らかのトラブルで閉まらなくなった時の緊急用ゲートとして使われます。



操作盤

 中位標高放流設備の操作盤です。普段は管理所からの遠隔操作でゲートを操作しますが、ここでも操作できます。何かのトラブルで遠隔操作ができない場合、ここから直接ゲートを操作します。



ホロージェットバルブ

 温井ダムの主砲です(嘘爆)波動砲が発射されます(嘘です)・・ホロージェットバルブです。放流時には、ビーム砲のごとく水が100m近くも飛び、すごい迫力です。ちなみに、間近で見た感想は、けっこうコンパクトだなぁと・・同時に、金属の肉厚がかなりある・・やはり水圧に耐えないといけないからなのか?このあたりは質問し忘れました・・

 ゲートの話になったので、温井ダムのクレストゲート(天端(てんば・ダムのてっぺん)にあるゲート)のローラーゲートの動作が変わっていますよねとこちらから聞いてみました・・つまり、通常のローラーゲートと違い、放流時はゲートを下げて、ゲートの上を水が越流する方式になっているのですが、これについては「ダムをすっきりしたデザインにするために採用された」と同時に「人為的ミスに対するプロテクションもあるんです、誤操作や故障で動かないなんてことはあっていけませんが、万が一のことも考えないといけません。上を越流する場合、水圧がかかっていませんから、間違えてゲートを大きく開けても、極端に大量の水が流れることはありません・・通常の引き上げ式のローラーゲートの場合、水圧がかかっていますから、開けすぎると、急激に放流量が増えてしまいます」とのこと・・


 

 また、「通常のローラーゲートの場合、ゲートが作動しないということになれば放流できませんから、概ねダムの天端を水が越えてしまう事態になり危険ですが、温井ダムのローラーゲートの場合、ゲートを閉じた状態(最も上に上げた状態)でも、上に十分空間がありますから・・ゲートが動かなくても水が安全に自然越流できるというメリットもあります」・・つまり、ゲートがトラブルで動かなくても放流できる構造になっているそうです。


クレストゲート

 越流式のローラーゲートはキャビテーション(越流する水でゲートが振動する現象・・場合によってはゲートが破損する)を起こしやすいという問題があり設計は難しいのですが、温井ダムの場合、スポイラー(ゲートの上に小さな羽を付ける)などを装備することによりその問題を克服しているようです。

○ (小さな羽がスポイラーです→)


 

 また、温井ダムの常用洪水吐(じょうようこうずいばき・・コンジットゲート)の超高圧ローラーゲートは、設計水深106mと、国内で最も深い位置で作動するゲートです。高い水圧でも水が漏れないよう、パッキンなどに工夫が凝らしてあり、また、ゲート開放するとき、高い水圧の影響であらゆる方向へ水が噴き出し、場合によってはゲートにダメージを与えることがある・・これについては、スポイラーを使い水が一定の方向へ飛ぶように工夫されいるとのことです。
 そして、自信を持って・・こうコメントされました「現在の日本のダム技術の集大成がこの温井ダムです」・・全くその通りだと思う・・高さは黒部ダムが日本一だけど、高さ以外の点・・各種設備は概ね国内最高レベルだし、技術的なことでも温井ダムは日本一だと思います・・


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